飼い猫と、番犬。【完結】
私が最後まで我が儘を通せるのはこんな風に受け止めてくれる人がいるからだ。
その事がとても嬉しくて、もう笑みしか浮かばなかった。
だけど後を追うようにしてじわじわと喉の奥から熱が込み上げてくるのは、これから先、二人には本来ならしなくていい辛さを味あわせてしまうかもしれないとわかってるからで。
「ごめんなさい」
何とも言えないその歯痒さにきゅっと唇を噛んだ。
やっぱり私の存在は何処にいても周りに迷惑しか掛けていない気がします。
そんな思いが渦巻いて、また心がいつものどろどろとした闇へと沈んでいく。
なのに、
「謝らなくてもいい」
「決めたんやったらもっと堂々としとけど阿呆」
二人に返された全く色の違う答えに若干面食らって、思わず顔を上げた。
「……もっと言い方はないのか」
「ええねん、こいつはこれくらい言わなわからんのや」
当の二人はと言えば、そんな言い争いを始めて私のことなんて見てもいない。
……もー人が真面目に悩んでいるのにですね……。
そんな形の違う優しさにいとも容易くあっさりと毒気を抜かれた私は、やっぱり、笑うしかなかった。
「良いんです一くん、この人はいつもこうですから」