飼い猫と、番犬。【完結】
もう何度目かになる京の冬は雪の降る日も多く、殊更厳しい。
廊下を歩けばその冷えた木の板にどんどんと体温が吸い取られていく。
左之さんや新八さんなんかは粋じゃないとか何だといって年中裸足で過ごしているけど、正直見ているこっちが寒くなるからやめて欲しい。
別に恰好悪いから何だと言うのだ。寒いものは寒い。
「……こほっ」
今晩はまた雪が積もりそうですね。
果てなく続く一面の雲。
砂を巻き上げ抜けてゆく北風に目を眇めて見上げた空は白く霞んでいる。
遥か高くから落ちてくる無数の小さな白い粒を頬に受けて、漸く見えた太鼓楼に帰屯の足を早めた。
まずは報告と向かった土方さんの部屋に行く途中、
「びちょ濡れやないかいだ阿呆」
現れたのは神出鬼没な黒猫だった。
頭拭かんかい、と袂から取り出した手拭いを手渡されたのはとても有り難いけれど、いつもながら色んな物を持ち歩いている奴だと思う。
この前お腹が空いたと言った時にそこに飴玉までもが常備されていることを知って、流石にちょっとびっくりした。
飴をちゃん付けで呼ぶのが密かに可愛かったのは内緒だ。
そんな思い出し笑い口許を緩ませながら、雪に濡れた髪を簡単に拭きあげる。
「今日は飴玉ないんですか?寒くて喉がイガイガして」
「あんで、ほれ口開け」
「わぁ有り難うございますっ」
「相変わらず仲が良いのですね」