飼い猫と、番犬。【完結】

この前の一件から平助は最低限の接触しかしてこなくなった。


避けられてる訳じゃない。
ただ前みたいに何でもないことで話しかけてくることがなくなっただけだ。


しょうがないとは思う。
淋しいなんて感じるのは私の勝手な我が儘。


それでも一時みたいに話せなくなった訳じゃないからこれで良いのだと自分に言い聞かせていたのに、どうしてこうもこいつといる時にばかり会ってしまうのか。


まぁ、最近はこの人といることが多いからなのかもしれませんが……。


二人の足音が遠ざかっていくのを後ろに聞きながら、そんな色々ともどかしい事実に溜め息が溢れた。



「……変なこと言わないでくださいよね」


けれども山崎にはやはり一言釘を刺しておかなければ気がすまない。話をややこしくしているのは間違いなくこの男なのだ。


「ええやん、嘘はついてへんやろ?」


……ああなんか物凄く肯定したくない。


なのに言い返された言葉にどうしても違うとは言えないのは、自分でも少々自覚があるからで。



「報告行ってきます。……これ、有り難うございました」


口の中でカランと飴を転がし、意地悪く微笑むそいつに手拭いを押し付けると、そそくさと土方さんの所に向かうことにした。


きっと、こういうのを惚れた弱味というのだ。
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