飼い猫と、番犬。【完結】
世話焼きの多い私の周りは皆暇があれば顔を出してくれるし、何かを持ってきてくれたり話を聞かせてくれる。
隊務に立つことはなくなったとはいえ、未だに除隊扱いとなっていないのは近藤さんの計らいだった。
本当は涙脆いあの人が、必死に涙を流すまいと奥歯を噛んでいた姿に、少しだけ昔のその人を思い出してほっとした。
近藤さんも……土方さんも、皆も。変わってしまったように見えてもきっと根はあの頃と変わらなくて。
そんな彼等の道を分けた志とか思想とか矜持とかいうものが今、とても虚しくみえた。
未だにそれらが理解出来ないのは私が女だからなのかもしれないけれど。
……元気、なんでしょうか。
誰よりも仲の良かったあの二人を思い出すのはこの先、もう二度と会えないかもしれないなんて……思ってしまうからだ。
「──組長っ」
翌日。
いつものように縁側で日にあたっていると、廊下の向こうから元気な足音が響いた。
「山野さん。今日は非番なんですか?」
「はいっ。で、ちょっと頼まれものがあって」
読んでいた本を閉じ、にこやかに駆けてきたその人を見上げると、何やら袂から出てきた白い包みが差し出される。
「山崎さんが今日は少し遅くなるからとこれを」