飼い猫と、番犬。【完結】
受け取った小さな袋の中からは何かが触れ合う固い音がして。
「……飴」
すぐに気が付いたその正体に、無意識にも頬が緩んだ。
確かに明日って言ってましたけど……別に忙しいなら今日でなくたって良いのに。
けど、本当にあいつが何も言わず現れなかったら間違いなく落胆していただろう自分がありありと想像出来るから、また笑えてしまう。
どうしよう……嬉しい。
「……お二人は相変わらず仲が良いですよね」
「へっ?や、そのっ」
からかうようなその声音に、すっかり存在を忘れていた山野さんへと慌てて顔を上げる。
「何だか本物の夫婦(メオト)みたいですよ?」
「へ、変なこと言わないでくださいっ、怒りますよっ」
悪戯っ子のように歯を見せて笑うその人の言葉は、恥ずかしいのにどこか嬉しくてむず痒い。
この人にとって私は『沖田総司』であって、決して『沖田奏』ではないのに。
手の中にある白い包みがあいつの影をちらつかせるから、どうしても変に意識してしまう。
そんなこと……絶対に有り得ないのに。
「冗談ですってばっ。……でも組長実際白無垢とか普通に似合いそうですよね」
「……貴方もそこそこ似合いそうですよ」
「ちょっ!変なこと言うのやめてくださいよっ」
「貴方が最初に言ったんでしょうがっ」