飼い猫と、番犬。【完結】
一組の布団に山崎と二人。
はみ出さないようにぴたりとくっついて体温を共有する。
ただそれだけで今夜はゆっくり眠れる気がした。
「ああ、そういや明後日副長が戻らはるらしいで」
「そうなんですね。じゃあ貴方もまた暫く忙しくなるんじゃないですか?」
「まぁな、あん人人使い荒いしなぁ」
ふわりと欠伸を溢す山崎は、何だかんだ言いつつ土方さんがいない間も忙しそうだった。
何やら攘夷の連中が攻めてくるという諜報が入ったとか、大政が朝廷へと返されただとかで、毎日近藤さんについてうろうろ。
合間合間で顔は見せてくれたけど、日によっては昨日みたいに夜までいないこともあった。
難しいことはよくわからないけれど、なんでも土方さんが近藤さんにこいつを預けていったとかで。
闇に物知りで学もあるのを改めて思い知らされて、ちょっと、感心する。
「あかん、寝る。おやすみ」
欠伸に潤んだ目を擦って口付けを寄越すと、山崎はそのまま寝に入る。
私が初めて血を吐いたあの時から私に手を出さなくなった山崎は、代わりにこうしてたまに部屋にやって来てはしれっと泊まっていく。
それが申し訳なくて、嬉しくて、どうすればいいのかわからなくて。
結局、私は何も言えないまま。
「こほっ……おやすみなさい」
溢れた咳に思考を閉じて、山崎の胸に額を預ける。
もうすぐ本格的な冬が来る。
あと少し……あと少しだからとこの温もりにすがる私もまたきっと、狡い。