飼い猫と、番犬。【完結】
隊を分けたあと、伊東さん率いる御陵衛士に参加したいという人達が再び現れ一悶着あってから、一隊士間による双方の交流は禁止されている。
なのに伊東さんについて抜けた筈のその人が、禁止と決めた土方さんと一緒に此処にいて。
どういうことかと詰め寄った私は後ろから現れた山崎に担がれ、半ば無理矢理そいつの部屋へと連れていかれた。
そして。
「……は?」
思いもよらぬ言葉に目一杯眉が寄った。
「やから、斎藤くんは元々うちの間者や」
「ちょっと待ってください、それってどういう──!?」
一応話し合いの末の円満な分離だと聞いていた私は、その間者という言葉の不穏な響きが一瞬理解出来なかった。
もうここにきて隠すつもりはないのか、これまでの経緯を聞かされゆっくりとその意味を咀嚼する。
気になるのは、一つだった。
「じゃあ、平助は……?」
一くんが戻ってきたということは何かがあったからで。
これから起きるだろう何かに、不安が沸々と湧き上がる。
これまでそれなりに裏の仕事にも関わってきた。
私にだってその意味くらいわかる。
「……あれは自分の意思で出てったんや。俺らがどーこーせぇっちゅうもんやないやろ」
「でも!っ、ごほごほっ!」
「落ち着き、決めるんはこれからや。取り敢えず俺は戻って話聞いてくるさかいに自分は此処で大人しぃ寝とき、ええな」
「っ、やま……ごほっ」