飼い猫と、番犬。【完結】
戻った山崎の口から聞かされたのは、やはり御陵衛士の中で近藤さんの暗殺が持ち上がっているという穏やかでない話で。
それに対して此方もまた伊東さんを闇討ちするという、うちの常套とも言える話になったとのことだった。
それが悪いとは思わない。
殺られる前に殺らなければ生きてはいけないから。
けど。
その伊東さんの体を利用して残る面子も一斉に、というのは到底頷ける話じゃなかった。
だって、そこには平助がいるんだから。
勿論流石に皆思いは同じなのか、今回出向くことになった左之さんと新八さんには平助を逃がせという秘密裏の命がおりたらしいけれど。
それでも何も知らない隊士に囲まれた中、朧な夜の闇に紛れての行動では上手くいく保証なんてないのは私自身よく知っている。
あの雨の日だって一人逃げられた。闇討ちなんて言わば賭けみたいなもので、それに安心出来る程私も単楽には出来ていなかった。
私の平助に対する気持ちを汲んでの温情なのか、流れだけは教えてくれた山崎だけど、それ以上は決して口を割ってはくれなかった。
二人に任せろというその人には、きっと私の行動なんて簡単に読まれているんだろう。
それから私の側には話し相手という名の見張りがついた。
あくまで私には手出しをさせないつもりらしいけれど……。
……それなら私にだって考えがあります。
「組長っ、お加減どうですか?」