飼い猫と、番犬。【完結】
いつの間にこんなに体力が落ちたのか。
その細身の体でさえ引き倒すのには思いの外力がいった。
覆い被さるように上から見下ろす私に、その喉仏がごくりと上下する。
幾ら中性的で整った顔であってもこの人は確かに男なのだと改めて思いながら、その首元に当てた懐刀に力を籠めた。
「すみません、事が終われば報告なり何なり好きにしてもらって構いません。ですから少しだけ、私に手を貸して欲しいんです」
今の私が屯所を彷徨けばどうしても目立ってしまう。
だから私にはどうしても協力してくれる人間が必要だった。
気のいいこの人のことだ、普通に言っても引き受けてくれたかもしれない。
でも、それだと後々更に迷惑がかかる。
それでは駄目なのだ。
「共に裁かれろとは言いません。貴方はこうして私に脅されただけ、何も悪くない。だからお願いです、私はもう、見てるだけなんて嫌なんです……!」
あの時、結局山南さんを助けることは出来なかった。
でも今ならこの手で平助を助けてあげられるかもしれない。
二人を信用してない訳じゃないけれど、もしもの事があれば後悔するのは自分だから。
私は、自らの足で平助のところに行きたかった。
「……、組長」