飼い猫と、番犬。【完結】
慌てて手拭いを押し当てる私に向けられた真っ直ぐな目。
その言葉が嬉しくて、
申し訳なくて。
益々顔が歪んだ。
「……ですが、私は」
「俺達の組頭は沖田総司だけです。皆一番組であることに誇りを持っていますよ。貴方は、違うんですか?」
なのに山野さんは更に追い討ちをかける。
私なんて名目上名は残っているとはいえ死病に侵され、隊務から離れて久しいというのに。
当時も、今も、まさかそんな風に思ってくれていたなんて思いもしなくて。
身も、心も弱っていた私はそのあまりの嬉しさに胸が苦しくて息が、詰まる。
「っ」
「ですから組長、そんな顔してないでちゃんと命令ください」
だからこそ見られたくなくてつい俯いた私の顔を両手で思いっきり潰して上を向かせる彼は満面の笑み。
そんな優しさにも目の奥が熱くなる私は近頃やっぱり、弱ってる。
結局、そんな山野さんに事情を話して調べて貰ったのは夕餉のこと。
午後に支度を始める通いの女中さんにそれとなく近づき、近藤さんと土方さんの二人が揃って夕餉を取らない日を聞いてもらった。
闇討ちならきっとあの時のように酒宴が開かれると思ったから。
案の定、数日後にあったその日は左之さんも新八さんも非番で。
きっと、間違いない。