飼い猫と、番犬。【完結】
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その日は半月を少し過ぎた、明るい夜だった。
一時は寝起きを共にしたかつての同志を闇討ちする──その全てから目を逸らすなと言わんばかりに、月が煌々と碁盤の町を照らしていた。
今回、俺の監察としての任は、この件に際し個々の動きを記録し報告すること。
故に、事が上手く進めば俺が手を出すことは何もない筈だった。
しかしながらこの人数。
局長の密命を受けた永倉くんと原田くんが接触する前に、何も知らぬ平隊士が数名、藤堂くんを囲んでしまった。
それなりの実力のある彼だ、そう簡単にやられはしないだろうが、どう見ても分が悪い。
……しゃあないな。
あまり表立って助太刀する訳にはいかないが、沖田の思いを考えればこのまま見捨てることは出来なかった。
無理矢理にでも飛び出しそうなあれを心配して、皆今日のことは頑なに伏せていた。
助けられなかったで済ます訳にはいかないのだ。
手ぇか足か。ちぃと痛いけど御免やで。
屋根の上から飛苦無を構え、藤堂くんと対峙する隊士へと狙いを定める。
だが、その向こう。
細い小路に潜む人間の姿に一瞬我が目を疑い、理解して、舌を打ち、狙いを変えた。
……んの阿呆っ。