飼い猫と、番犬。【完結】
覆面に笠という怪しい出で立ちではあったが、その華奢な体つきで沖田だというのはすぐにわかった。
どうやって此処を嗅ぎ付けたのかという疑問は兎も角。
恐らくその不審さ故に敵と見なされたそいつは、気の立った隊士の的となっていて。
長く任から離れているからだろう、そんな明らかな殺気にすら気付かぬ沖田に奥歯を噛んだ。
「阿呆っ!何やっとんねん!」
「へっ、うわっ!?」
手の甲に飛び苦無を生やした男が短い呻き声をあげて刀を落とした刹那、高みの見物を諦めた俺は男を殴り倒して沖田を抱える。
そして。
「受け取れ藤堂!」
「へっ?うわっ!」
こっちの騒ぎに気付いたそいつに放り投げ、その勢いのまま側にいた残る二人を蹴り倒した。
似たような声あげよってからにやっ。
なんて少々どうでも良いことを考えつつ。
「走れ!」
「は?ちょっ……!」
状況を掴めぬまま呆ける藤堂くんの頭を流れるようにしばき、細い路地へと飛び込んだ。
響く怒号から大分遠ざかったのを確認して、漸く足を止めた俺の後ろで藤堂くんが沖田を抱いたまま肩で大きく息をする。
「ちょっ……なに、一体どういう……」
「こほっ、自分だけは助けろっちゅう上からのお達しや。ちゅうかそろそろそれ返し」