飼い猫と、番犬。【完結】
物というのは人を縛る。
その向こうについ誰かを見つめてしまう。
故に俺はこれまで何かに執着することなく生きてきた。
これからも俺が誰かに何かを残すことはないだろう。
それは勿論沖田にも。
しかしながら今、藤堂くんを生へと繋ぐのはこいつの存在しかなく。
悪いけど縛られてもらうで。
それはきっと良いことばかりではない。
見る度に思い出されるのは二度と手の届かない女。別れの言葉も交わさず、最後に触れた温もりだけがその手に延々と残り続ける。
仲間を捨て、師を捨て。
一人世に紛れて生きていくのは常に罪悪感に苛まれるに違いない。
まだ若いこいつがこれからどれだけそんな思いを抱え続けるのかというのを考えれば、それは少々酷なことのようにも思える。
だが。
沖田がこいつの死を望まない以上、俺にはそんなことはどうでも良いのだ。
「……総司は、あとどのくらい生きられるの」
御守りを握り締め、藤堂くんが小さく呟く。
「さぁどやろな」
「……あんたは本当にそれで良い訳?」
「どっかあかんことあるか?」
小首を傾げ微笑む俺に、藤堂くんは僅かに眉間の皺を濃くしたあと。
ゆるゆると眉を下げて沖田を見つめ、きゅっと唇を噛んだ。
「わかった」