飼い猫と、番犬。【完結】
「ま、そんな訳でよろしゅう頼むわ沖田助勤」
色々楽しませてもらうさかいに。
視線を逸らしていた沖田の耳許で小さく囁いて、再びその体を抱き上げる。
「ちょ……っ」
「もー話は仕舞いやろ? 今なら人の気配もない、降りんで」
慌てふためいて目を丸くしたそいつは、ちらりと眼下に目をやるとすぐに体を縮こまらせた。
赤なったり青なったり忙(セワ)しないやっちゃ。
何て思いながらも、これから黙らせる時は屋根の上だなと密かに決めた。
背丈の高いわりに軽い華奢な体つきは女であるが故なのだろう。
しかし布越しでもわかる引き締まった体はちょっといただけない。
女子てこう、ふにっ、ふよんってしとるからええのに……。
あの時さらし越しに触れた胸の感触を思い出して、思わず溜め息が零れた。
「なぁ自分もっと肥え、細すぎや。そんなん体力もつかんわ」
やっと戻ってきた縁側で着衣を正す沖田を眺めて腕を組む。
この数日見たところこいつは剣技は兎も角体力があまりない。朝稽古も最後は人一倍息が上がっている。
それは自らも気にしていたのか、口を尖らせ素直に拗ねた。
そういう仕草が男らしくないと本人は気がついていないらしい。
「……これでも人並みには食べて」
「微乳が無乳になったら流石に悲しいやろ? もーちょいやらかい方が俺も嬉しいし」
最早触らねばわからない胸を着物の上から確認する。
数瞬の間を置いて。
矢のような速さで飛んできた拳を飛び退きかわすと、俺はそのまま再び屋根へと逃げた。
新たなおもちゃのお陰で暫く楽しい日々が過ごせそうだ。