飼い猫と、番犬。【完結】
「やっぱりちょっと待っ……!私明日は大坂で」
「もう遅い。ええやん、良順もわーっとるって。見せびらかしてき」
「見せびらかすって貴方……っ」
突然慌て始めた理由は今更過ぎて、はいそうですかと止める気なんて起こらない。
寧ろもっと際どいところにつけてやろうなんて思いが湧いて、未だ手をつけていなかったさらしに手を掛けた。
「やっ、ちょっ待っ……」
端さえほどけば案外簡単に緩むその細布の下に指を滑り込ませる。
随分と手慣れたものだと思いつつ、鎖骨をなぞった舌先を下へと這わせていく。
「やまざ──」
その細い指が、俺の長着を強く引っ張った。
そんな時だった。
「な……にやってんですか」
俺達のものではない声が部屋に響いたのは。
……間ぁの悪い奴め。
「ひゃっ!?てっ……て、鉄くんいやあのこれはっ」
「ちっ、起きよったか。ええとこやねんから餓鬼が邪魔すんなや」
「え……ええとこって!どう考えても今沖田さん嫌がってたでしょう!腐っても恋仲だからと思ってたのにこの男の風上にも置けない奴めっ」
「わー鉄くん違うんです違うんですっ!そんなんじゃないですからっ」