飼い猫と、番犬。【完結】
翌日。
綺麗に晴れた空の下ではまたも乾いた砂煙が舞い上がった。
戦況は変わらず劣勢のまま。
それは千両松に布陣していた俺達だけでなく、富ノ森にいた幕府軍も同じくらしく、流れてくるそんな話に副長は忌々しげに唇を噛んだ。
けれど、じわじわと後退させられつつも応戦するその人からは諦めの色は感じられず。
それに引っ張られるようにして周りの連中も必死に相手を迎え撃った。
しかしながら、それでも現実的な戦力の差は埋まることはなく、徐々に深手を負う者も増えていく。
射程の長い向こうの銃から距離を取っても、追い詰められていくうちにそこに入るのは当然で。
「ぐっ」
「大丈夫か!?」
副長のすぐ側にいた隊士が腹を撃ち抜かれたのはたまたまだ。
丁度偵察から戻った俺がその人の近くでそれを見ていたのもたまたまで。
「糞っ、しっかりしろ!」
地面に崩れたその隊士を庇うように片膝をついたその人の後ろに咄嗟に立ったのもたまたま。
「──っ、う」
そこに次の弾が飛んできたのもまた、たまたまだった。
「っ、山崎っ!?」