飼い猫と、番犬。【完結】
「ごほっ」
痛みに加えて微かに血の味がする咳。
これまでのものと違うのはすぐに理解出来た。
いつの頃からか溢れるようになった咳が沖田と同じだと気付いてからというもの、どのみちいつかはこうなると覚悟はしていた。
あの時の一撃で肺腑をやられたらしい俺は、それがほんの少し早くなっただけ。
故に後悔はなかった。
寧ろ俺を蝕む病の事実をこいつに知られることなく持っていけるのならそれで良いのかもしれない。
──否。それで良い。
「……なあ」
「ゃ……です。何ですかそれっ、したいならいつもみたいに自分からすれば良いじゃないですかっ」
なのに意地っ張りな沖田はそんなことを言う。
目一杯眉間に皺を刻みながら泣きそうな顔で、何かを理解して。
「……なんや、けち臭いやっちゃな」
「貴方こそこんな時にっ」
「こんな時やさかい、したいことしたいねんけど」
沖田の逃げ場をなくすこんな言い方は少し狡いのかも知れないけれど。
それでもこれが俺で。
今、他にしたいことなどないのだから仕方ない。
横向きに寝かされていた体を僅かに仰向かせ、沖田を見上げる。
「なぁ、奏」
「っ、」