飼い猫と、番犬。【完結】
不揃いの髪は左右の長さもバラバラ。肩に付くか付かないかになったそれは京に上った頃よりも短くて、何だか頭が軽くなった。
「おま……少しって」
「あんまり少ないとけち臭いって言われるんですよ」
ありありと耳に響くあいつの声を聞きながら、前を向いたまま言葉を返す私に、土方さんは小さく吹き出す。
「あいつが欲張り過ぎんだよ」
穏やかな声でくしゃりと髪を混ぜてきたその人には、お見通しだったのかもしれない。
私が振り向けなかった理由が。
それでいて一定の距離を保ってくれるその優しさが今はとても嬉しくて、私はまた、ぎゅっと唇を噛み締めた。
「……なんか童みたいだな」
暫く黙って海を眺めたあと。
懐刀を仕舞うついでに顔を拭って振り向いた私の顔を、土方さんが顎に手を置いてまじまじと見つめる。
「ごほっ……良いんです、髪なんてそのうち伸びます。それよりそろそろ本当に限界なんで戻りますよ」
寒さと涙で真っ赤になっているだろう鼻を啜り、そんな顔をあまり見られたくない私は一瞥したその人の隣をすり抜けた。
なのに船内に入ってみれば、明らかに此方を覗いていたらしい挙動不審な連中がいて。
「……その、これはだな……」
「ふ、副長が一人で出てっちゃったからしょうがなくですねっ」
「そ、そうだ!歳が一人で良いとこ取りするから俺達はだな!」
「……何なんですかもう」