飼い猫と、番犬。【完結】
慌てふためく三人に思わず笑ってしまった私を見て、皆は明らかに安堵した様子で目を合わせる。
一くんに鉄くん、そして近藤さん。今回のことではきっと此処にいない人達にも心配をかけてしまっているに違いない。
考えれば昔も今も、私の周りは心配性ばかり。
それはとても恵まれていて、幸せなことなのだと思う。
「……すみません、少し疲れたのでちょっと休ませてください。起きたら声をかけますから鉄くん、あとで髪を揃えてくれませんか?」
「あ、はい!喜んで!」
すぐに後ろから現れた土方さんと五人で短い会話を交わしたあと。そう切り出した私に鉄くんが妙に元気に目を輝かせる。
そんな年の離れた弟のような彼が可愛くて、少しだけほっとした。
けど。
「有り難うございます。じゃあ、またあとで」
そんな彼らと別れ、一人部屋に戻ると重い現実が私を出迎える。
敷いたままの布団に汚れたさらし、水の張った桶にかかったままの手拭い。
目につくのは山崎のいた名残ばかり。
再び襲う淋しさに山崎が横たわっていた布団へと潜り込めば、冷えきったそこにはまだ仄かにあいつが薫る気がした。
もう心配する必要はないのだという事実がまた私の心を押し潰して、また嗚咽が溢れそうになる。
けれどもあいつが気になってあまり眠れなかったここ最近の寝不足や疲れ。
そして、少しずつ温もる布団がすぐ側にあいつの体温を感じさせて。
今日だけ、と、布団に隠れて泣いているうちに、いつの間にか深い眠りへと堕ちていた。