飼い猫と、番犬。【完結】

しかしながら大人しいなぁなんて油断しているとそうでもなく。


「むわ!」


邪魔するなと言わんばかりに、その長い尻尾で顔をはたかれたりする。


くっそ……人の膝で寛いでる癖に。


そんな可愛くないところまで何故かあいつにそっくりで……可愛い。


……なんて矛盾したことを思う私の頭はそろそろ不味い。


まぁ特にすることのない私にとっては、平坦な感情に起伏をつけてくれる貴重な相手であることは間違いなく。


何事もなかったかのように丸まるそいつを撫でながらまた、穏やかな風に揺れる庭木へと視線を戻した。




「……皆は、元気なんでしょうか……」






新選組は甲陽鎮撫隊と名を変え甲州(山梨の辺り)へと向かうことになったと、先日見舞いに来てくれた近藤さんが言っていた。


今も尚、戦場に立つかつての仲間が気にならない訳がない。


時折、酷く不安になる。


想像すらしたくない言い知れぬ恐怖に夜、ふと眠れなくなる。


そんな時に限って咳も止まらなかったりして、また、違う恐怖に襲われるのだ。





「あ」



勿論猫は何も答えない。
庭に降りてきた雀に誘われるように、あっさり膝から下りて行ってしまった。



「……薄情者め」



そんな気儘な黒猫にやっぱりあいつを見てしまう私は最近、我ながら可愛いと思う。
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