飼い猫と、番犬。【完結】
梅雨が明け、照り返す日の光すら眩しい、カラリと晴れた日だった。
朝餉を持ってきてくれた母屋のお婆ちゃんがいなくなった部屋には、蝉の声だけが五月蝿く響いていた。
殆ど手をつけられなくなった粥は、勿体ないから量を減らして欲しいと言っても、気にせず食べなさいと笑われる。
こんな他人にまでとても良くしてくれる植甚の人達に申し訳なさと嬉しさを感じながら。
私は床の中から緑の濃くなった庭を眺めていた。
相変わらず、あの黒猫とは会えなかった。
もしかしたらもう此処には来ないのかもしれない。
誰からの便りもなく、新選組の皆もどうしているのかわからない。
このまま誰にも会えずに死ぬんでしょうか。
することのない私の頭に浮かぶのはそんなことばかりだった。
……淋しい。
考えれば考える程、ほろほろと痩せ細った心が剥がれて弱い自分が顔を出す。
会いたい……会いたい。
つんと熱くなった目の奥に、庭の緑が滲んでいく。
此処に来ると望んだのは私なのに、仕方ないとはわかっているのに、勝手にも淋しさに心が渇く。
死ぬのは、もう怖くなかった。
寧ろ早く連れていって欲しいとすら思った。
ただ今は淋しくて淋しくて──
辛い。
そんな時。
滲んだ視界に黒が、見えた。