飼い猫と、番犬。【完結】
「……人を蹴ったらなぁ、いつかそない我が身に返って来はるんえ」
せめて目ぇくらい閉じさせてあげよ思うて触れた顔は、まだ生きてはるみたいに温うて。
うちはそのままその手から刀を取って、そっと、指を絡ませたんどす。
自分勝手で我が儘で、思い通りにならへんとすぐに怒らはるそのお人。
金子返して欲しいて通うただけどしたのに、無理矢理お酌させられて手籠めにされて。お陰で店にも戻れへんようになってしもた。
憎ぅて憎ぅて仕方あらへんかった筈やのに……
何でうちは、淋しいなんて思うんやろか。