飼い猫と、番犬。【完結】
眉を潜めて視線をさ迷わせた様子からしてあまり良くない話なのだろう。
もしかして。
不安に胸をざわつかせて脳裏に過ったのは、自分が女だと囁かれているのではないかということ。
「何」
笑みを消し、その先を催促すると、平助は僅かに唇を歪ませて静かに口を開いた。
「……総司がその、山崎さんに狙われてるーって」
私が山崎にーって……。
「はぁ!?」
何ですかそれ!!
「ちょ、落ち着いて」
シィっと人差し指を立てて慌てる平助にはっとして、言葉を飲み込む。
それを確認した平助は、困ったように眉を下げた。
「ほら、最近あの人よく総司といるでしょ?」
「あれが仲良く見えるようならその目は節穴です」
私が抉って差し上げましょう。
そりゃよく絡まれますし、あながちそれも間違ってはないんでしょうけど、大抵は向こうが一方的に喋ってるだけですし。
あとは稽古で殺りあうか、突然気配を潜めて膝かっくんしてきたと思えば文句を言おうとして開いた口に饅頭詰めて逃げてったりとよくわからない行動ばかり。
へらへら笑ってるのはあの人だけで、こっちはすっかり眉間に皺の跡が刻まれてしまってるんですけど?
次々に思い出された奇っ怪な行動に思わず顔が歪んだ。