飼い猫と、番犬。【完結】


「他でもない、沖田さんのことだよ」


やっぱりなぁ。


気づいてはいた。


憧れ、恐れ、妬み、好奇。
様々な色を映した眼が沖田に向けられるなか、勿論純粋に恋慕の視線を投げる輩もいたが、こいつらは違う。


酷く厭らしい下卑た視線。


獲物としてしか相手を見ていない欲にまみれた視線であれを見ていた。


よくもまぁこんな連中を入隊させたものだとその選択に甚(ハナハダ)だ疑問を感じるが、そこは一先ずおいておこう。


「あん人がどないしたん?」


先は容易に想像がつくが、ここで警戒されてはいけない。


阿呆を決め込み、さも興味あり気に食い付いてみる。


「いやーほら、俺達もさぁー」

「おめぇもあれ、狙ってんだろ?」


すると進みの遅い会話に耐えきれなかったのか、三郎を押し退け一郎が登場。


気ぃの短いやっちゃ。


相手にされてないようだがな、と見下げたように笑うのもこいつの下手な算段かと思うと、つい吹き出しそうになる。


「でだ、俺達と手を組まねぇか?」


誰が組むかいボケ。


俺はこない見えても割りと仕事にゃ真面目ちゃんやねんで?


自分らみたいなんに愛想振り撒くんもそんな仕事の一貫やねん。舐めてもろたら困るわ。


……や、困らんな。寧ろどんどん舐めてください。や、それはただの変態やろ。


……んなこたどうでもええねん。
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