飼い猫と、番犬。【完結】
なのにその人は私を見るなり僅かに目を瞠って固まって。
私は早速、浮かれた自分を後悔した。
「……変……、ですか?」
「あ、いや、そういうの初めて見っからよ……」
思わず足元を見つめた私に降ってくる言葉はどこか困ったように頼りない。
やっぱり今更こんな恰好変……ですよね。
しゅるしゅると萎んでいく気持ちにぎゅっと唇を噛む。
この場にいるのが酷く居たたまれなくなって、逃げ出したい──そう思った直後、不意に強く手が引かれて。
突然のことに驚いた私は早足で歩くその人によろけそうになりながらも慌ててついていく。
「あ、あのっ」
「……ちょっと意外で驚いた。……似合ってる」
それなのに前を向いたままの土方さんがぼそりと呟いた言葉が熱をもってゆっくりと拡がる。
……照れてる。
珍しいお褒めの言葉が本音なのかお世辞なのかはわからなかったけれど、私を元気付けようとしてくれたことは確実で。
その真っ直ぐな不器用さと、言いながらに照れるその人の初めて見る可愛さに、ころりと機嫌が直ってしまった。
「良かった」
少し肌寒い夜。
結局、そのあとも繋がれたままだった手は暖かくて、また、ドキドキした。