飼い猫と、番犬。【完結】
つい長話になってしまった脳内での独り言に突っ込みをいれて掻き消すと、目を輝かせて先を促す。
「ほんでほんで? 手ぇ組んでどーするん?」
「あ? そりゃ四人なら力づくで」
「ほうほう。ほなそんあとは?」
「逃げるに決まってんだろ。給金に釣られて来てみたけどよ、稽古は厳しいこき使われる、これじゃ割に合わねぇよ」
ひらりと虫を払うように手を振る男の言葉がその根本にあるものなんだろう。
ほんで最後にいっちょかましたろかーっちゅうあれかいな。なんや企んどるなぁ思たけどただの根性なしやん。
どーせ稽古でしばかれた腹いせにーとかなんとかそんなこっちゃろうけど、まったケツの穴のちっちゃいやっちゃ。
加えて、俺をノリの良い阿呆だと信じて疑わないただの屑。
一人では何も出来ない小心者の集まり。
誇りも何もない、下衆。
ちぃと游がせてみたけど間者やないんやったらもーどーでもええわ。
「中々おもろそうな話やん」
俺よりも背丈のある三人を見上げていた顎を下げて、口許だけを綻ばせる。
「なら」
「けどあかん、あれは俺のやから」
ここにきて一等の笑顔を浮かべ顔を上げた俺に、三人は一瞬きょとんと目を丸くする。
だがすぐに意味を理解して、開いたままだった口から一郎が声を漏らした。
「は?」
「やーかーらー、あれは俺のんやさかい、手ぇ出してもろたら困んねん」