飼い猫と、番犬。【完結】
好きだった。
でも、何も望んだりはしない筈だった。
私はずっと沖田総司のままである筈だったのに。
「……本当、に?」
直接向けられたその言葉が嬉しくて、そんな決意も簡単に崩れてしまいそうになる。
「どうして嘘だと思う?」
「……だって、私ですよ?」
「それの何が悪い」
「……女らしくないし、料理なんて出来ないし」
「お前にしとやかさは求めねぇ。飯は……うちの姉貴んところにでも行って教えて貰え。あいつなら喜んで叩き込んでくれる」
一瞬、言葉を詰まらせて声を低くしたその人はやっぱり正直で。
ああ、そこはやっぱり気にはなるんだなと思うと、思わず笑ってしまった。
そうだった、この人は嘘が苦手だった。
人を傷つけるような嘘は決してつかなかった。だから私はこの人を好きになったのだから。
なら……。
言われた言葉の意味は流石にわかる。
信じられないという気持ちはまだ確かにあったけど、未だ掴まれたままの腕から伝わる熱が全身にじわりと拡がっていって。
どうしようもなく熱くなる目の奥に、きゅっと唇を噛んだ。