飼い猫と、番犬。【完結】
日向の影に 平助目線
あれからどのくらい経ったのだろうか。
明治へと改元された今、髷を結う人はすっかりと見なくなり、刀を差して歩く人間ももういない。
洋服に身を包んでいる人ですら、何でもないように街を闊歩するようになった。
街は穏やかに、だが確実に変化を遂げていた。
あの頃の俺達は一体なんだったのだろうと思う程に。
騙し騙され蹴落として。
それでも俺達は其々の信じるものの為に刀を持って戦った筈だった。
それなのに御陵衛士の多くは死に。
新選組は朝敵となって政府に追われ、そしてなくなった。
京という小さな世界で共食いに明け暮れた俺達はまさに井の中の蛙だったのだ。
世の中は平和になった。
けれど近藤さんも土方さんも……総司も。
かつての仲間の多くももうこの世にはいない。あとは生きているのか死んでいるのかそれすらもわからない奴らばかり。
そんな中で俺は確かに生きていて、この穏やかな毎日が少し──辛い。