飼い猫と、番犬。【完結】
俺の短い返しに会話が止まる。
気不味い空気を作っているのは俺だ。
悪いとは思う。
思うのだけど、この人を目の前にするとどうしてもそこに総司を重ねてしまう。
それは総司に対しても、彼女に対しても失礼なことだとわかってる。
けれど向けられるその優しさは泣きたくなる程に甘美で、これまでの全てを吐き出したくなる。
弱い俺が、顔を出そうとする。
元新選組だったことがバレればこの人達にも迷惑がかかるかもしれない今、感情のままに甘えることなど決して許される訳がないというのに。
……もう、潮時なのかもしれない。
これ以上此処にいてはいつしか俺はズルズルと二人に――この人に甘えてしまう。
重荷を、与えてしまう。
そうならないうちに此処を出よう。
そう、決意したところでまた、彼女の声が聞こえた。
「……それ、また見てたんですね」
彼女が見つめるの先にあったのは首に下がったままの御守りだった。
総司によく似た顔で笑う彼女に見られるのは何となく後ろ暗くて、俺は慌ててそれを握り締める。