飼い猫と、番犬。【完結】

此処に来て暫く経つが、昔馴染みである幹部連中の沖田に対する可愛がりようは誰の目にも明らかだ。


あれの側には大抵誰かが一緒についていて、こちとらちょっかいかけるのも一苦労。


確かに歳も若く女子の身でこんなところにいるのだ、それはまぁわからなくもないが……。


藤堂くんとかどー見ても溺愛やもんな。俺見たら総ちゃんより嫌そうな目ぇで見てくんもん。


他の連中は兄ちゃん的なアレや思ててんけど斎藤くんはどっちやろか……。


今しがた向けられた殺気はあくまでただの牽制なのだろうが、その端々に含まれていた感情は流石に計りきれずに首を傾げた。


けど好いた女子とおんなし部屋とか藤堂くんもアレやなー生殺しやん。隣に斎藤くんおったら夜這いするわけにもいかんしなぁ。同情するわーぷぷ。


がすぐに別のところが気になった。


ま、他の連中があれをどう思てようが俺には関係ないしな。


敵は多い方がおもろいし。


お庭番に囲まれた難攻不落の姫君だからこそ絶対に落としてみたくなるもの。


経験上こういうことに焦りは禁物だと理解している。


これは仕事ではない、時間はたっぷりとあるのだ。


とりあえず今回の種が芽ぇ出すまでちょい待つかぁ。



刻々と白に染まりつつある庭を一瞥し、袖に付いた雪をパタパタと払い落とすと、俺もまた冷たく冷えた廊下を歩き出した。






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