飼い猫と、番犬。【完結】
だって、意味がわからない。
ならどうしてこんな所までついてきたのか。男に扮し、他人を殺めてまでそうする理由が俺にはどうしても解せなかった。
想いを捨てられないくせに。
どうせ知らない土地なのだ、ついてくるなら女として側にいれば良いのに。
そんな思いでぽろりと言葉を発して、気が付いた。
局長ですら妻も子も郷里に置いてきているのだ、それを考えればこの人一人がまだ祝言すら挙げていない女を連れて来ることは出来なかった筈だ。
確かに沖田は言っていた。
『自分の意思で刀を握っている』と。
……一緒におる為、か……?
いつ戻るかもわからない相手を待つのは辛いもの。強くいられるのなんて始めくらいだろう。
そのうち不安や淋しさに侵食される。心は側で通わせなければ想いなど簡単に変わっていく。
あいつのように。
それを思えば沖田の想いは酷く馬鹿げていて、酷く純粋にも思えた。
正しいかどうかはわからない。
寧ろ間違っているのかもしれない。
けれど普通の女にはないその潔さに、眩さすら覚えた。
なのにもやもやと言い様のない感情が湧いたのは、それとは程遠い己の過去を重ねたから──
……阿呆や。