飼い猫と、番犬。【完結】
そんな土方さんの横顔に半目の視線を突き刺している間にも話は進む。
「よし山崎、ついてこい」
そう言って立ち上がった土方さん達に、山崎とかいう黒いのは手にしていた棒をさらりと左之さんに押し付け縁側に上がった。
ぷ、また図太いのが来ましたね……。
なんてつい笑ってしまったのも束の間。
すぐ側を通り過ぎたそいつは、すれ違い様に私の方をちらりと眺め、
「へぇ」
と嫌な笑みを残していった。
……何ですか、あれ。
さっきまでとは確かに異なる笑みにその本性を垣間見た気がする。
確かに腕を組んで壁に凭れ、見定めるようにして見ていた私は、少々偉そうだと思われたのかもしれない。
でもこれは腕試し、そんな視線を浴びるのはわかってた筈で。
じゃあ何だと言えば、考えられるのは一つしかない。
あの人が笑ったのは恐らく私の見た目。
今までも散々手合わせする相手に舐められる要因になってきた、全くもって男らしくないこの容姿だ。
……そりゃ?
捕り物の時もひょろいだの女顔だのと馬鹿にはされてきましたよ?
自覚だってあったりしますよ?
でも初対面でこれから仲間になるだろう相手にする態度じゃなくないですか!?
……私よりチビのくせに。
これは一度稽古の時におもいっきり思い知らせてやらねばなりませんね……。
「おー総司、何怖ぇ顔してんだよ? 綺麗な顔が台無しだぜ?」
「……私は元来こんな顔です。て言うか貴方も負けたのに悔しくないんですか?」
どうしてやろうかと稽古の内容を練っていたところで、二本の棒を担いだ左之さんが近寄ってきて。
折悪しく発せられたその言葉に益々目が据わる。
綺麗とか全然嬉しくないっ。