飼い猫と、番犬。【完結】


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それは、たまたまだった。



いつものように副長に一日の報告をしている最中に、巡察に出ていた藤堂くんがいつもより遅く、部屋にやってきた。


俺を見た途端に不機嫌丸出しになるから面白い。


餓鬼臭いやっちゃ。


沖田にしてもこれにしても。
このくらいの年頃は俺もこんなもんだったっけかとちょっと思いを巡らせる。


けれど笑顔の俺を無視して土方副長に報告をし始めた彼の言葉に、つい耳が反応してしまった。




「総司が熱?」


副長が眉を潜める。


「うん、まだそんなに高くなさそうだけど、雨に濡れたのもあるし部屋で寝とくように言ってある」

「……わかった。またたまに様子見とけ」

「ん」


……へぇ、あれが熱なぁ。


中々面白いものが見れそうで、ふと口角が上がる。


あくまで俺を空気の様に扱い諸々の報告を終えた藤堂くんがさっさと出ていくと、俺も少しばかり口を挟ませてもらうことにした。



「熱冷ましならええのありますけど。医学の心得もまぁ多少なら」


俺の言葉が意外だったのか、副長は僅かに目を見開く。


「うちの父も鍼医や言いましたやろ。俺らみたいなんはよう薬売りに化けますさかい、そーゆぅんはちぃとばかし詳しゅうなるんですわ」


薬売りは情報を取る為の常套手段と言って良い。だからこそボロが出ないよう、そこらの町医程度の知識は頭に叩き込んであった。


思わぬ──と言うかこれが本来の使い方なのだろうが、知識は意外なところで役に立つものだ。



「俺が診てきましょうか?」



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