飼い猫と、番犬。【完結】
とうの昔に忘れた筈の記憶が呼び起こされるのは、この二人に己の過去を見てしまうから。
そこにはもう痛みも苦しみもないけれど、中途半端な二人を見ているとどうしても小さな苛立ちが湧いて、邪魔をしたくなる。
早よう忘れたらええのに。
──俺みたいに
そう、引き摺りこんでやりたくなるのだ。
指先でつまみ上げたのは置いたばかりの薬包。
掌に開けた散薬にほんの少量の粥を垂らし練り合わせていくと、小さな丸薬が出来る。
持ち歩く時や幼い童に飲ませる場合なんかに便利な方法なのだが、こういう時にも役に立つらしい。
起きるかもしれないがそれでも構わない。
ある意味、これは治療だ。
出来上がった丸薬を舌先に乗せ少量の水を口に含めば、ほんのりと口内に苦味が広がる。
すぐに緩やかに溶け始めたそれがこれ以上溶けないようにと、俺は素早く沖田に覆い被さった。
元より半開きだった唇に舌を割り入れ、水と一緒に薬を押し込んだところで流石に沖田が身動ぐ。
「ん……、むっ!?」
寝惚けた頭が漸く状況を理解したんだろう、少しの間を置いて、慌てたそいつが俺の腕を鷲掴んだ。