きらきら輝かせて恋色に

「マチ子ちゃん、大丈夫!?」

廊下で泣いていると、春樹さんが
駆け寄ってきてくれた。

とたんに気が緩んで、私はもっと泣いて春樹さんを困らせてしまう。

「どうして春樹さんは私にそんなに優しいんですか?」

シャワールームでシャワーを浴びて、
着替えていると扉の向こうで春樹さんが言った。

「僕はマチ子ちゃんが気に入ったんだってば。言ったでしょ?
それに、あんな脚本書いた僕にも責任があるかなって思って」

「そんなことないです。
私が目を付けられるのはたぶん、
当たり前のことなんだと思います」

そう。主役はみんながなりたくても、
みんなは、なれない役なんだもん…

「大丈夫、僕はマチ子ちゃんの
味方だからね」
「ありがとうございます…」

どこからどこまで優しいの…

今出てる涙は、さみしいからじゃない。

…嬉しいから。

こういう時、本当に心から気持ちが
あふれるんだなって思う。

そして、不思議と強くなれる気がする。

シャンプーとせっけんの香りに
包まれて、あったかくって、
私は幸福な気持ちでいっぱいになった。
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