悪魔の微笑み【短編】
「あら?千夏こんなところで立ち話?お友達にも悪いから中に入ってもらいなさいよ!」

母親は、珍しく友達を連れてきたと思い込み嬉しそうだった。

「いえ、私はこれで失礼します。帰り道偶然会っただけですし…」

吉田麻美は愛らしくそう言った。


そして、私とすれ違い際に小声でボソッと言った。

「明日…楽しみだね…」

背筋がゾクッとした。

後ろ姿の吉田麻美を私は唇を噛みしめて見つめていた。



「ねぇ、千夏!」

母親の声で私は我に返った。

「あの子名前何て言うの?可愛らしいわねぇ~。お行儀もいいし~」


私が吉田にいじめられていることを知らない母親はのん気なものだ。

私は愛想悪く「隣のクラスの子」と答えて家の中に入った。
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