舞*姫-mai*hime
-祥side

…美咲。
俺は、兄貴じゃねぇぞ?
腕の中でねむる美咲を強く抱きしめた。
いつからだっけ?
俺が兄貴の代わりになったのは。
美咲のために…。
泣き顔なんて見たくねぇから。
────────…

半年前、突然姿を消した美咲の彼氏である俺の兄貴。
龍神十六代目総長で、俺にとって憧れの存在。

何も言わず、残さず消えた兄貴を
歴代の方や組織の人たちと探したが
見つからなくて今も探し続けている。

兄貴がいない。
その現実を受け入れることが出来ないでいる美咲は
夜になると兄貴の姿を探し泣き暴れる。
そんな美咲を見ていられなくて
ある時、俺は美咲に言った。

「俺を兄貴だと思え」

もちろん美咲は反対した。
でも、泣き顔を見てるだけで
何も役にたてない俺は
兄貴の代わりに美咲を抱きしめてやるしかなかった。

それからは自然に2人になると
俺は"祥"じゃなく"竜"って呼ばれることが多くなった。
さすが兄弟だけあって、声も顔つきも似てたから
さほど抵抗がなかったんだと思う。

美咲が竜を求めるとき、
俺は竜として美咲を抱いた。
ずっと好きだった美咲を
こんな形で抱くとは思わなくて
胸が痛かった反面、幸せを感じていた。

その日から
俺は兄貴の代わりでもいい。
そう思い始めるようになった。
美咲が俺を求めてくれるから…。
たとえ嘘でも偽りでも。

< 2 / 6 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop