舞*姫-mai*hime
『お前もこりねぇなー』
「簡単に諦めるわけないじゃないっすか」
『何度来ってあたしの返事は変わんないから』
この男、戸谷 健(とや けん)はあたしの一つ下。
入学式の日、見た目から派手な戸谷が絡まれてた所を助けてやったら
"俺を龍神にいれてください!!"って。
何度も何度もしつこいったらありゃしない。
「俺、あの時みた舞姫さんに憧れてっ!」
『その話は聞きあきた。』
「どうしても入れてくれないんすか?」
『そのつもりだけど?』
知り合って間もないし、喧嘩はよえーし。
なんで全国No.1のチームに入れなきゃならないの。
「そうっすか…じゃあ仕方ないっすね」
『そゆこと』
「…最後にいいっすか?」
『なに?』
なかなか消えてくれない戸谷にイライラしてタバコに火をつけた。
「舞姫さんって──…祥さんとデキてるんすか?」
『なんで?』
「さっき屋上で」
あーね。
龍神しか出入りしねーのになんで入ってんだよコイツ。
『ふーん…覗き見なんて趣味わりーな』
机の灰皿にタバコを押し付けながら戸谷に目をやる。
「いいんすか?俺バラしますよ?」
『へー』
「嫌なら龍神に入れて下さいよ」
めんどくせぇなコイツ。
図々しいにも程があんじゃねーの。
だんだんイライラが収まらなくなってきたあたしは
目の前の机ごと戸谷を蹴り飛ばした。
ガラスの灰皿が落ちて割れる音と、机の倒れる音で
今までうるさかった教室は一瞬で静まり返った。