私の決心
今までは遠慮してくれていたのかも。

さすがに私が40歳になったから、心配でわざわざ聞いてくれたのかな。

「プロポーズされて、本当に結婚寸前までいったんですけどね…。」

私は今でもこの話をすると、ちょっと胸の端っこがちくっとする。

「それは初耳だな。」

興味深そうにこちらを見る部長。

私の様子から、もう少しこの話を聞いても良いと判断したようだ。

「まだ会社に報告する前でしたから。仕事優先し過ぎて、捨てられちゃいました。私は不器用だったので、仕事も覚えるのに時間がかかって。残業していたら、仕事と俺のどっちが大事なんだって言われました。普通、女が言うセリフですよね。」

苦笑いするしかない。

でも仕事を辞めてまで結婚したいと思わなかったのも正直な所。

だからちゃんとその質問に答えられなかった。

「俺は仕事を一生懸命する橋本って良いと思うぞ。なんでそいつには分からなかったんだろうな。」

部長は日本酒を飲みながら、微笑んだ。
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