私の決心
「そんなに力を入れないで。楽にして。」

ニッコリと笑う部長。少しだけど緊張が解ける。

「ほら、その表情。絶対会社ではしないよな。でも少し硬いかな。」

嬉しそうに部長が続ける。

思わず力が抜け、その言い方に微笑んだ私。

「その顔!」

「え?」

「さっきの自然な笑顔は俺以外には見せるなよ。」

そういうと部長はおしゃべりをやめ、真剣にキャンバスに向かった。

黙々と描く続ける部長。

私はその姿を、自分の中に刻むように眺めていた。

とても声なんてかけられない部長の様子。

小一時間たっただろうか。

「休憩しようか?コーヒー入れてくるから。」

「はい。」
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