私の決心
私から一歩後ろへ退いた部長の気配を感じた。

部長だってこんな事を私に言うにはかなりの勇気が必要だっただろう。

モデルを引き受けた時以来の戸惑いだった。

見られるのも恥ずかしいのに、触らせるのはもっと抵抗がある。

でも、あの時と部長への信頼感は全く別のものとなっている。

考えている私を見ている部長は何も言わない。

どれくらいの時間が経ったのだろうか。

私は首を横に何度か振った。

私の気持ちは決まった。

「…良いですよ。素の私を描いてもらうのに必要であるのなら。 ここまで来たらとことん部長に付いていきます。」

私は赤い顔を部長に向けた。

これが私に出来る精一杯のぎこちない表情。

「お前、本当に無理しなくてもいいんだぞ。絵はちゃんと仕上げるしつもりだし。」

珍しく大慌てで、私に大げさに答える部長。
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