私の決心
そう思った瞬間、部長はそれ以上の事を言った。

「橋本、俺と結婚して俺の子供産んでくれない?」

「えっ?」

私の想定をはるかに超えたその台詞。

しかも私達は恋人同士ではなく、会社の上司と部下。

「そうしたら俺が定年になっても、お前と一緒に居られる。」

少し冷静を取り戻した部長の表情は優しい。

「私…。」

あまりの事に私は唖然として、言葉が繋げない。

「そろそろ絵の完成が近づいている。お前との時間が無くなるのは寂しい。ずっと会社で橋本の事が気になっていた。」

それは明らかに、部長の告白。

確かにこんなに週末を楽しく感じたのはいつ以来だっただろう。

定年後は、プライベートどころか会社でも部長とは会う機会はなくなる。

それは確かに私も寂しい。
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