不思議の国の女王様
 
 さぁ、とネコが道を譲った。


 行け、という意味らしい。


 だがうさん臭いネコの手前、素直に従うのは気が引ける。



「迷うかい? それもいいだろう。これからのことを決めるのはキミ。ここは、キミの好きなようにしていいんだ。……さて」


「え、おま……身体が透けて……!」


「『こちらの世界』はどこか歪んでいる。だけど、キミはここにきた。それは紛れもない、キミの意思なんだよ。

 失くしたものを探したいなら、迷わず進むんだ。キミにはその勇気と力があるのだから」


「おいっ!?」



 聞き返す間もなく、現れたときと同じようにネコはスゥッと消えてしまった。



「だーっ! 面倒くせーな!」



 いつまでもこんな薄気味悪い森の中にいたくない。


 考えるより先に動こう。


 そうと決まれば、早速行動あるのみだ。
 
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