不思議の国の女王様
*隻眼の騎士:ハートのジャック
「どうしちゃったのかねぇ」
首を傾げた後、少年と入れ替わりの来客に気づいた。
歓迎しようとした帽子屋だったが、すぐに顔を引きつらせる。
目にも鮮やかな真紅の軍服。
腰には白銀の剣。
右目に眼帯を装着した青年には、嫌というほど見覚えがある。
「ジャック!」
「お久しぶりでございます」
「オ、オウ……お前さん、こんな辺境の帽子屋に何の用だい。今日は特別に休日だが、仕事ならバリバリやってるし……」
「アリスが来訪したとの情報を掴みまして。女王陛下がお連れするようにと仰せです」
「あぁアリスね、なんだ抜き打ち検査じゃないのかよかった……じゃなくてアリスだと!」
思わず叫んでしまって、口をつぐむ。
ご丁寧にもジャックは見逃してくれず、紺青の髪と同じ左目がスッと細まる。