不思議の国の女王様
「『あちらの世界』と『こちらの世界』の境界線で、迷い込んだアリスの保護をされているはずですが……ご存知ではなかったのですか?」
「あぁ知っているとも。俺はきちんと仕事してるさ。
悪いんだが、女王の思い違いなんじゃないか? だって、来たといったらさっきの少年くらいで……」
言いながら、口をあんぐりと開ける帽子屋。
「……まさか、そんな。だってあれは男で……」
「アリスに性別は関係ありません。失礼いたします」
ジャックは身体の向きを変え、勢いよく床を蹴った。
紺青の隻眼にほかでもなく、あの少年を捉えて。