不思議の国の女王様
 
 バラと同様、真紅のドレスを身にまとった少女が、羽根ペンを置いて椅子から立ち上がる。



 同い年ぐらいだろうか?


 赤いレースリボンに束ねられた、漆黒のくるくるツインテール。


 小柄な背丈も手伝って、普通なら幼く見えるはず。


 が、凛然とした歩き方は、軟弱さを一切感じさせない。



「まばゆい黄金の髪、サファイアの双眸、しなやかな肢体。……美しいな」



 いつの間にかそばまで来ていたアメジストの瞳が、じっと見上げてくる。



「美しいが、まるで人形のようだ。心を持たぬ、虚ろな傀儡」


「……俺がすっからかんだって言うなら、あんたが持ってるんだな、俺の失くしたもの」


「口だけは一人前、か」


「何だと!」


「まぁ聞け。わかっておる。お前が外の世界から迷い込んだということ」
 
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