不思議の国の女王様
 
「じゃあ俺、元の世界に帰れるのか!?」


「無事、アリスとしての役割を果たし、失くしたものを見つけたなら」



 女王の言葉に希望が見えたと共に、どうしようもない気持ちが湧き上がってきた。



「名前なんて、どこを探したらいいんだよ……」



 普通に考えて、そんなもの失くすはずがない。


 だから、どこにあるのかなんて想像がつくはずもない。



「お前は、名前を失くしたと思っているのか?」


「は? 何かおかしいかよ?」



 女王が息をついた。


 なぜそこでため息をつかれるのか、わからない。



「アリスよ、もともと、お前の世界とこの世界は相反するもの。決して交わってはならぬ。互いに影響することがあってはならないのだ。お前の真名さえも」


「それはどういう……」


「失くしたのではない。名乗ることを許されないのだ。この世界で、お前はアリスにしかすぎぬのだから」



 ……そんな。


 俺が俺であることを、許されないなんて。
 
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