不思議の国の女王様
「わらわは宰相ほど玉座に興味はない。だがお前を守るために必要。だから譲らない。それだけのこと。
お前のためなら、悲しき運命とやらに身を任すことも厭わぬ。
わらわも誓おうぞ。お前のその右目に。失われた時間は、必ず取り戻す」
「……シェリル様……」
「あぁ、やはりお前に名を呼ばれるのは、胸が躍るな。それでよいのだ」
華奢な指先が頬を滑り、眼帯の上からまぶたにふれる。
「お前の脳天は面白味がない。頭を上げていろ。そのかんばせを見せておくれ」
ひとたび覗き込まれたなら、大粒のアメジストに、吸い込まれてしまう。