不思議の国の女王様
「ちょっと待てよ!」
カツカツと遠ざかる2人分の足音を、とっさに追う。
「……何用だ」
「意味ありげなこと言われたら、気になるだろ。困ってるんなら、聞いてやってもいいけど?」
どうせヒマなんだ。
基本楽観主義だが、やるときはやる。
たまには、周囲に気遣いを見せてやるのも一興だろう。
「結構」
「……は」
前を歩く女王が足を止めた。
無意識のうちに同様にしてしまう。
振り返ったアメジストの輝きは厳しい。
今まで目にしてきたものの中で、ずっと。
「『施してやろう』という心持ちであるなら、即刻取り下げろ。お前に助力を乞うほど、落ちぶれてはおらぬ」
表情に比例して、いやそれ以上に厳しい声音が、耳に、身に突き刺さる。