不思議の国の女王様
 
「後悔しておられますか」



 予想通り、椅子のそばに立つジャックは真顔であった。



「老いぼれ宰相共と、愛想笑いの茶会を開かねばならなくなったことか? わらわが決めたことだ、お前が案ずることではなかろう」


「そうではありません、アリスのことです」


「あやつのために、何を後悔することがある?」


「あれほど冷たく当たられるのは、歴代では考えられなかったことです。アリスを部屋に招くことも」


「情が移っているとでも言いたいのか」


「どうでしょうか。ただひとつ言えることは、あのアリスは今までのアリスとはまったく違うということです。順応が早すぎると言いましょうか」


 異世界に迷い込んだ。


 にも関わらず、半狂乱になって取り乱す様子もない。


 ジャックの疑問はよくわかる。
 
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